セラムン Act.28 総括

要するに、セーラー戦士達の友情を、「何となくクラウンに集うお友達」レベルの関係から、一歩踏み込んだ「プリンセスを護るという使命を共有した、かけがえのない親友」にステップアップさせるための通過儀礼的なストーリーだったんですな、第二クールは全て。
思えば、Act.15 から向こう、少しずつセーラー戦士達の友情にひびを入れていく展開が繰り返された。

  • Act.15 衛とうさぎ、宝石泥棒を追う。亜美、なると険悪に。
  • Act.16 うさぎ、衛と一緒にいたとは言えず、「なると一緒にいた」と言ってしまう。そのために亜美が嫉妬に狂い自己嫌悪に陥る。
  • Act.17 うさぎ、恋の病を発病。正常な行動が取れなくなりついに戦闘を放棄。レイ、ヴィーナスの正体を知る。
  • Act.18 レイ、ヴィーナスの行動に疑念を抱き、単独でその謎に追いつこうとする。まこと、衛に婚約者がいることを知り、うさぎの恋の応援にしか目がいかなくなる。
  • Act.19 レイ、ヴィーナスを追うことに専心。亜美、手袋を編み始める。
  • Act.20 うさぎ、衛に婚約者がいることを知り傷心。まこと、タキシード仮面=衛を知る。レイ、「自分一人で戦う」と決め、クラウンに寄りつかなくなる。

と、どんどんうさぎたちセーラー戦士がバラバラになるようなストーリーの組み方をしているのだ。
そのストーリーが、Act.21 の亜美ダーク化により転換される。自分たちがバラバラになっていたことに気づかず、「セーラー戦士達は何があっても友達」と勝手に思いこんでいた甘さを思い知る。
そのうえ、うさぎは亜美を失ってもなお、衛への恋心を忘れることが出来ない。もちろん亜美のことを気遣う心に嘘はない。嘘はないけど、衛への恋との間で揺れていた。それもそのはず、衛とうさぎは前世で惹かれ合った仲。それもその恋がきっかけで世界まで滅ぼしたのだ。たかがカラオケボックスに暇だから集う程度の友情など、入り込む余地など無かったのだよ。だから、自分がプリンセスだと知り『衛との恋は危険だ』と理解するまで、亜美を救えなかったわけだ。
一度、薄甘い友情を破壊して、その再生を描くことで結果として結束を深める、と言う物語を、なんと1クールもかけてしまったのだ、小林靖子は。しかも、その幕間に衛のしがらみ、四天王それぞれの目的なども織り込んでいる。
逆算すれば、一見もたついた展開に見える第二クールは、全て必然だったことが判ってくるのは、ちょっとした驚きですらある。やっぱすごいわ、小林靖子は。